財団法人 極真奨学会 国際空手道連盟 極真会館 浜井派

社会教育・貢献


日本の財産としての武道をないがしろにしている日本

武道対談
  東孝(大道塾代表師範・塾長)
  松原隆一郎(東京大学大学院教授)
  石川良一(稲城市長・全国市長会社会文教委員長)


石川 武道で海外に行くと、柔道にしても、空手にしても、空道にしても、一応日本が本家ですね。「自分たちが本家である」というものを失わないで行くというのは、非常にいい体験になると思います。

たとえばアメリカに行くと、国も大きいし、いろいろなものに圧倒されてしまうわけですね。でも私がニューヨークに行ったときも、武道をやっているということで、逆に一目置いてもらえるわけです。

それ以外のものでは、たとえば商社マンで向うへ行っている人だって、結局はある意味で西洋文化の一部をただ担っているに過ぎなくて、その程度にしか見られないわけです。だけど、少なくとも武道で海外へ出て行けば、われわれが担ってきたものを外に広めているという視点で見られますから、それなりに尊敬してもらえますし、こちらもそれに合わせた対応をしなければいけないし、変な話、結構もてますし(笑)。

岸先生も「俺よりも学歴も上で頭も優秀で、商社で来ている人間はいっぱいいるよ。だけど、あいつらはいくら英語がしゃべれても絶対にもてない。俺なんか英語もわからないけど、どこに行っても尊敬してもらえるし、もてるよ」と、いつも自慢してましたけど、そうだろうと思います。そういうものを持って、一回外に出てみる。もちろんいいところも悪いところも両方見えてきますが、そういうものが、「道着一つで」という考え方です。


 私はもろに戦後教育を受けた人間だから、海外に行ったときは、日本というのはダメな国だ、小さい国だ、世界に悪いことをしているんだという発想だったんですよ。
本を読んだりするのが好きなほうだったので、そういう意味で変な知識が入っていたわけです。だけど向うへ行ってみたら、武道をやっているというので最初から一目置かれた感じで見てくれる。それがすごい衝撃だったね。

まして向うの連中はみんな身体が大きいでしょう。そういう連中が、私が武道をやっているということで「先輩」とか「先生」と言ってくれるから、すごいものだな、これは日本の財産だなと。とにかく武道というのは日本の財産なんですよ。
もちろん武道だけじゃなくて、華道も、茶道も、「道」とつくものはみんな日本の財産です。だけど日本はこれをものすごくないがしろにしているような気がするね。


松原 「ないがしろ」という話は重大な問題だと思います。
たとえばフランスで柔道というときに、彼らは《道》のほうに関心があるんですね。強さという意味では、フランスでは60万人も柔道をやっているから強い人もいるのですが、むしろ礼儀作法をなかなか家で教えられないから、教えてくれる場所が道場だという発想です。
いま講道館だって、六時、八時の稽古って強い人間がたくさん来ているわけじゃない。日本人はあまり多くなくて、むしろ外人ばっかりですね。外人には型が好きな人がたくさんいて、講道館で汗を流している。

そういう意味でいくと、日本人のほうが本来の武道の良さを見失っているところがあって、「先輩後輩」という発想はもともと日本人的なものなのに、それを外人のほうが持っていて、日本人があまり持っていない。
他流だったら関係ないみたいな感じもありますし、むしろいま国内のほうが混乱しているような気がします。


 まったくそのとおりですね。僕は先輩に対しては、いまは結構礼儀正しいと思うけど(笑)、いまの日本人には「少しぐらい先輩でも関係ないじゃないか。そんなの関係ないよう。ましてや、いまは僕のほうが強いんだ」みたいな考え方がだいぶ入ってきているからね。

おもしろい話があって、日本の選手をロシアに連れていくとおとなしいわけ。だから最初から気が荒い奴を連れて行って、「試合が始まったら審判がやめろと言っても少しぐらいいいから、そのぐらいの気迫で向かっていけ」と言ったら、ものの見事に審判がやめろと言っても止まらなくて、場外に出るまでやるわけ。
そしたら、普段は私に絶対に口答えなんかしないロシアの支部長が私のところに食って掛かってきて「先生、何であんなのを連れてきたんですか。われわれは、はっきり言って元々先輩後輩という発想はないんですよ。武道はそれを教えるから、大事にしているのであって、ただ単に強ければいいというんだったら国がめちゃくちゃになる。だから、われわれは武道を大事にしているんですよ」って。

僕たち日本人や、日本武道に一目置いて立ててくれるのはそういうことだったんだなと思って、そのときに「なるほど」と気づいたけど、本当に象徴的な話だね。
いまは日本でも、先輩がいようがある程度は関係ない、みたいになっちゃってるけど、向うの連中はそれがフィクションだとわかっていても、「それをやらなかったらきちがいに刃物を持たせることになる。だから武道が大事だ」と言うんですね。だから、あのときは素直に「いやあ、悪かったな」と謝ったんだけど。



石川 ロシア人のもともとの闘争心はわれわれより強いでしょうからね。

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